ある閉ざされた雪の山荘で:映画と原作の違いはある?小説ファンも楽しめる?

ある閉ざされた雪の山荘で:映画と原作の違いはある?小説ファンも楽しめる?

この記事はネタバレを含みます。

原作小説、映画いずれかをご覧になっていない方は、

どちらかをご覧になってから読まれることをお勧めします。

東野圭吾原作の「ある閉ざされた雪の山荘で」

「映画.com」では注目映画No.1(2024.1月現在)となっていて、初日から3日間の興行成績は、観客動員数15万人、興行収入2億1900万円超で第2位という好スタート!

原作を読んだファンから見て、映画は結局どうなんだろう?原作との違いはどんなもんなんだろう?と気になる方も多いのでは?

結論から言うと、原作と映画は大筋は同じです。違うのは細部と物語の締めくくりです。

今回は「主にどのあたりが違うのか」を覗いてみたいと思います。

最初にそれぞれの作品の概要ですが、物語がつくられた時代も少しだけ2つの作品の相違点に影響を与えています。

もくじ

ある閉ざされた雪の山荘で 原作(小説)・映画の作品情報

原作となる小説は今から約30年前ほど前に発表された作品です。

ある閉ざされた雪の山荘で 原作小説の作品情報

1992年3月に発表された東野圭吾の長編推理小説。

講談社ノベルスとして単行本が発行。同年の日本推理作家協会賞(長編部門)候補作となった。

候補作は同作と「ブルース(花村萬月)」、「リヴィエラを撃て(髙村薫)」の3作品。受賞は「リヴィエラを撃て(髙村薫)」。

1996年1月講談社文庫から文庫本が発行。2023年12月現在、105刷が発行されている。

ある閉ざされた雪の山荘で 映画の作品情報

2024年1月12日公開。監督・脚本は飯塚健。主演は重岡大毅。

トリックや人物描写の複雑さから映像化は不可能と思われていた。

それだけに自作の映画化に東野圭吾も「想像もしていなかった」と不安を隠さなかったものの、試写を見た後は「杞憂だった」と、完成度の高さに舌を巻いたという。

では本題に入ります。

ある閉ざされた雪の山荘で 原作(小説)と映画の違い

冒頭で述べたとおり、原作と映画は大筋は同じです。

ある閉ざされた雪の山荘で 原作と映画の違い 全体

物語の初期設定に若干の違いが見られます。

【物語の視点】

  • 原作:「私(麻倉雅美)」と「久我和幸」のそれぞれの視点が入れ替わりながら展開。クライマックスに「私」という1人称が現れ、物語の視点が明かされる。
  • 映画:視点の違いはないが、麻倉雅美から見える視点は監視カメラを通して物語に散りばめられている。

【ペンション所有者の有無と、所在地】

  • 原作:小田伸一というオーナーがいる。実は麻倉雅美の叔父で、悪質な趣味がある。麻倉雅美がペンションで復讐を計画・実行できた背景には叔父の協力がある。また、この場所は麻倉雅美の実家から車で1時間程度の場所でもあり、準備がしやすい。
  • 映画:特に所有者なし。

【麻倉雅美が物事を観察する方法】

  • 原作:2階にある遊戯室にある物置スペースから元村由梨江・笠原温子の部屋に開けられた穴に仕掛けたマジックミラーと、2階の吹き抜けから見える1階。また、1階には盗聴器もある。 
  • 映画:監視カメラとモニター。

【麻倉雅美の立ち位置】

  • 原作:実は雨宮恭介に思いを寄せている。また、容姿が元村由梨江に大きく劣るため演技力で優っていても、同じヒロイン役を演じると見劣りするために勝てない。オーディションの不合格にはこの理由が影響。また、下半身不随の原因はスキーでの自●未遂だが、その動機は笠原温子、雨宮京介、元村由梨江の3人の言動が影響。
  • 映画:雨宮恭介に対する恋心はない。オーディションに落ちた背景には笠原温子の「枕営業疑惑」と元村由梨江の父が劇団のスポンサーという事情。容姿は無関係。下半身不随は事故によるもの。原因は笠原温子、雨宮京介、元村由梨江の3人の言動によるもの。

【笠原温子の立ち位置】

  • 原作:演出家の東郷陣平と「付き合っているのではないか」というウワサが劇団内にある程度。映画版のような強烈な個性は見られない。
  • 映画:東郷陣平に対する枕営業を仕掛けて自分の配役をつかみに行く勝気な女。このことで自分を非難する相手に対してケンカ腰な態度を見せる。

【久我和幸の立ち位置】

  • 原作:元村由梨江に片思いをしている。劇団「水滸」のオーディションを受けた理由も、彼女を演劇で見て一目惚れしたから。物語の中でも何とか彼女との距離を詰めようと試みる。
  • 映画:劇団「水滸」の大ファンで劇団員のことをよく知っている。

【雨宮京介と元村由梨江の立ち位置】

  • 原作:2人は付き合っていて、婚約している。 
  • 映画:付き合っているように見えるが、そうではない。

【オーディションの3次選考内容】

  • 原作:自分で好きな台本から好きな役を選んで良いが、女性陣は元村由梨江に容姿で負けることを知っていて、彼女の選んだ「ロミオとジュリエット」のジュリエット役は敬遠。そんななか、麻倉雅美はジュリエット役で真っ向勝負をするも落選。 
  • 映画:脚本は「滑車と歯車」のワンシーン。ちなみにこの中で言うセリフは、後にこの山荘事件の計画役になることを暗示しているようにも聞こえる。(何を言っているかは、映画で確かめてください!)

【ペンションに劇団員が集められた理由】

  • 原作:次回作の細部が未完成のため、設定上の状況で生活すること自体を舞台稽古として完成するという、演出家である東郷陣平からの指示(実はこの指示な偽物)。
  • 映画:これから起こる事件を解決した者が次回作の主役となる。

これらの「初期設定」に違いが見られます。

原作に見られる設定の複雑さを少しシンプルに分かり易くした印象が映画にはあったように見えました。

特に笠原温子が自分の役を取るために枕営業を仕掛けるという強烈な個性が、原作とは大きく異なり強いインパクトを物語全体に与えます。

このため、天才とされる麻倉雅美が選考から振り落とされる不条理さが際立ち、物語が分かり易くなっているように思えました。

ある閉ざされた雪の山荘で 原作と映画の違い1日目

【久我和幸のある言葉】

原作では言うことのない、久我和幸のある言葉が映画版でのエンディングに大きく影響する。

どの言葉か…は映画で確かめてください。ここは感動ポイントなので。

【笠原温子の殺害場所の特徴】

  • 原作:電子ピアノは置いてあるが、部屋が防音になっているので使用時にヘッドホンをつける必要がない。殺害時にヘッドホンをつけていたことに、久我は違和感を抱く。 
  • 映画:部屋が防音という設定はない。

ある閉ざされた雪の山荘で 原作と映画の違い2日目

【ブレーカーが落とされる】

  • 原作:ブレーカーが落ちたことに気付いたのは久我和幸のみ 
  • 映画:全員が気付いていた

映画はブレーカーを落としたのがすぐに分かる演出だったので、観客を「ん?何のためだ?!」という思考にリードしてくれる感じです。

【麻倉雅美の確信】

原作:元村由梨江が雨宮を恋人ではないと言ったことで、麻倉雅美が「この子は私が見ていることに気付いている」と悟り、殺人が演技であることを確信する。

映画:特にそのような場面はなし

ある閉ざされた雪の山荘で 原作と映画の違い3日目

【取り乱す人物が異なる】

  • 原作:田所義雄が恐怖に耐えかねて東郷陣平に電話しようとするが、男3人に止められる。
  • 映画:雨宮恭介が恐ろしさのあまり、ペンションを荷物をまとめて出ようとするが、仲間らに引き留められる。

原作は田所が「地の行動」をすることに対し、映画では「演技の行動」を取って観客を「え?じゃあ誰が犯人なの?」と混乱させているように見えます。

【アリバイ証明のために寝場所を共有する組み合わせが異なる】

  • 原作:久我和幸、田所義雄、雨宮恭介、本多雄一が集まって就寝する。
  • 映画:久我和幸、田所義雄、中西貴子が集まって就寝する。

ある閉ざされた雪の山荘で 原作と映画の違い4日目

【麻倉雅美の事実】

原作:オーディションに落選後、雨宮京介、笠原温子、元村由梨江が慰めに行くが良かれと思い話した内容が雅美の傷口を深くする。その後の3人の様子に憎しみを深めた麻倉雅美は3人の車のタイヤに穴を空ける。それに気づいた笠原温子が「事故で雨宮と元村が死んだ」と雅美に嘘の電話をする。雅美は自●未遂を図り、下半身不随となる。その後、2度目の自●未遂を図る。

映画:3人が雅美を慰めに行くが、話す内容は異なる。その後、雨宮が運転ミスで高速道路の中央分離帯に突っ込んだと嘘の電話をする。その電話を受けながら放心状態となって歩く雅美はトラックにはねられ、下半身不随となる。

麻倉雅美は原作で2度の自●未遂をしていて、その場面も克明に描かれている分、映画よりもさらに悲壮感が漂います。

映画ではその「悲壮感」を殺人計画のノートで表現しているように思えます。

予告編にもチラっと殴り書きのような書き方のものが出てきますが、あれよく見ると●害計画が記されています。

その上から恨みの言葉が殴り書きされています。

【物語の締めくくり】

  • 原作:雅美は最初からおかしいと気づいていた。2日目に殺人は全て芝居だと見破り、「芝居はいいものだ」という思いから「3人とも、芝居はやめないで」と語りかける。 
  • 映画:舞台女優として戻ることを決意。そして…

原作と映画の最大の違いは「物語の締めくくり方」です。

その締めくくり方…はここでは伏せます。劇場でのお楽しみです!

ある閉ざされた雪の山荘で 映画版は原作小説のファンでも楽しめる?

【みんなの声】原作を読んだらしき方々の声を、偏りのないように集めてみました。

ある閉ざされた雪の山荘で 原作ファンの声①

「面白い」という声の方が多い印象はあります。つまらなさの指摘としては、原作から見てツッコミどころや物足りなさがあるという感じです。

ある閉ざされた雪の山荘で 原作ファンの声②私見

結論:楽しめます。おススメします!締めくくりの完成度の高さに注目です!

「小説の映画化・映像化」というものでよく聞かれるのは「原作のほうが面白い」という声です。

これは仕方がないかな…と個人的には思います。

小説って、100人の読者がいたら100通りの想像の仕方で読みます。

これに対してひとつの映像でこの100人の読者を満たすというのは至難の業かなあ…と。

さらに原作を知らない観客をも取り込んで興行収入を稼ぐことが要求されれば、その作業は余計に困難を極めることと思います。

この作品も原作を忠実になぞって見ると、映画版にはどうしても説明不足な点が出てくるのは事実だと思います。

例えば、なぜ雅美が殺人計画の実行場所にこのペンションを選んだのか、殺され役の3人はいなくなった後どこにいたのか、などです。

しかし、この映画の締めくくりは、そんな「物足りなさ」を全部吹っ飛ばしてくれる完成度の高さに舌を巻きます。

そして、物語の序盤に久我和幸が言った一言に対し、最後に本多雄一が「ある名言」をで応じたところ久我の目から涙が溢れます。

3重になっているトリックが最後に解き明かされてスッキリして「ふぅ~…」と一息ついたあと、最後のトドメをズドーンと食らう爽快感と感動を劇場で実感してみてほしいです!

まとめます。

ある閉ざされた雪の山荘で:映画と原作の違いはある?小説ファンも楽しめる?まとめ

  • 映画と原作は大筋は同じ。
  • 設定がところどころ違うので、物語の展開もその分変化している。
  • 映画版は原作に比べて説明不足なところがあるのは否めないが、エンディングが素晴らしさがそれを吹き飛ばす威力がある。

あとはぜひ、ご自分で確かめにいってみてくださいね!

ここまで読んで頂いてありがとうございました!ハトポッポでした。

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