「天空の城ラピュタ」の原作や元ネタと言われる4つの作品はどこまでホント?

ラピュタ

何度見ても素晴らしい天空の城ラピュタ。

この作品の元ネタや原作とされる4つの作品について紹介していきます。

もくじ

ラピュタの原作のように扱われる「ガリバー旅行記」

ガリバー旅行記のことはDVDのケースにも、予告編のナレーションにも紹介されています。

そして、作中でもパズーがガリバー旅行記の話をします。

DVDのケースにこう書いてあります。

「ガリバー旅行記」の中で伝えられた空中の浮島ラピュタ帝国。そこに秘められた謎の飛行石をめぐってくり広げられる波乱万丈の冒険活劇!

「ガリバー旅行記」の中に伝わるラピュタに行く、というような紹介になっていますね。

予告編ではこんなナレーションがあります。

「ガリバー旅行記に伝わる、空に浮かぶ城”ラピュタ帝国”。そこには莫大な財宝と謎が隠されていた。少女シータはその秘密の鍵を握っていたため、女海賊や軍隊に追われる羽目に」

そして作品の序盤でこんなシーンがあります。シータが空から降りてきた翌日、パズーの父さんが撮影したというラピュタの写真を見るシータにパズーが言います。

「スウィフトがガリバー旅行記でラピュタのこと書いてるけど、あれはただの空想なんだ」

※「スウィフト」はガリバー旅行記の作者。ちょっと面白い人物なのであとで説明しますね。

ラピュタの写真
引用:スタジオジブリ|STUDIO GHIBLI

パズーは父さんの見たラピュタは本物だけど、ガリバー旅行記の中のラピュタは空想なんだよ、ということを語るシーンです。

つまりDVDのケースや予告編で言っていることとはちょっと違う路線のことを言っています。

ガリバー旅行記について、宮崎駿氏がインタビューで語ったこととは?

この映画とガリバー旅行記のことについて、監督の宮崎駿氏が過去のインタビューでこう語っています。

どうせなら「宝島」みたいなものをつくろうと思ってたんです。それで海の向こうにある宝島より、空に浮いている島がいいやと突然思いついて、途中から企画書に入れはじめた。

確かそういうのは「ガリバー旅行記」に出てたなあと思って。

企画書に「ガリバー旅行記・第三部」に出てくると書くと、それを読んだことのないオジサンたちが、何となく、ああ、そうか! と思うでしょ。説得力があるんですよ。

女房に電話して、百科事典を調べてもらったら、ラピュタという名前だと聞いて、ガッカリしましてね。これは良くない名前だなと思ったんだけど、ヤケクソで「ラピュタ」って題名にしちゃったんです。

インドとの合作で”ラーマーヤナ”という物語の企画があった際、古代に空を飛んだり、核兵器を操ったりしていた、というアイデアがあったのを覚えていた。

そしてこんなことも語っています。

物語を作るときというのは、ネタ本があるというのではなく、子どものとき読んだものが色々いり混じって錯綜してモチーフになっているんですよ。

「原作」と呼ぶよりも「影響を与えたネタ」くらいな感じのようです。

また、ガリバー旅行記を覗いてみると「ラピュタ」というの名前だけでなく、物語の設定にも大きな影響を与えていることが分かります。

ガリバー旅行記に出てくるラピュタがどんなものなのか見て行きましょう。ちなみにガリバー旅行記に出てくるほうは「ラピュータ」という発音。

ガリバー旅行記の内容

アイルランドの風刺作家ジョナサン・スウィフト(1667~1745)の18世紀に出版された作品で、医師レミュエル・ガリバーが世界を旅するという物語。 

全部で4編から成り、「ラピュータ」が描かれるのは第3編。

ジョナサン・スウィフト
ジョナサン・スウィフト
引用:ウィキペディア

第1編では身長が通常の人間の12分の1ほどの小人の国リリパット、第2編ではあらゆる物が巨大な巨人の王国ブロブディンナグが描かれます。

ガリバー旅行記の挿し絵
左:小人の国リリパット 
右:巨人の王国ブロブディンナグ 
引用:ウィキペディア

そして第3編に登場するのが巨大な「空飛ぶ島」ラピュータ。この物語の設定が面白いことになっています

ガリバーの出身国イギリスから、はるか東にバルニバービという島がありこの島が空に浮かぶ空中都市ラピュータに支配されているというもの。

ラピュータの挿し絵
左:ラピュータの挿し絵    
右:ラピュータとバルニバービの挿し絵 
引用:ウィキペディア

このバルニバービという島、実は荒れ果てた都市になってしまっていて、時々領主や農民の反乱が起こる。

そのたびに国王はラピュータを反乱地の上空に急行させ、太陽や雨を遮り、罰としてその農業を破滅させ飢餓と病を与えるというスゴイことをする。

都市で起こる反乱に対しては、ラピュータが上空から石を落下させ、さらに街ごと押し潰して鎮圧するということまでする。

このラピュータの住民は全員、科学者。で、いつも黙々と科学のことを考えている。

ということで、ラピュータが巨大な力でバルニバービを支配している、という設定。

かつてラピュタが強大な科学力で地上を支配した、という映画の設定にはここから来ていそうですね。

ちなみにこのジョナサン・スウィフトは風刺作家なので、事実を元ネタにした皮肉を描くことが彼のスタイルです。

今の時代では「ガリバー旅行記」はこどもの絵本として読まれるのが一般的ですが、元々は痛烈な社会批判をベースにしているわけです。

例えば、小人の国として描かれるリリパット国内では2つの党が争っています。

その理由は「女性はハイヒールを履くべきか、ローヒールを履くべきか」というくだらないもの。

これは当時のイギリス国内の「2大政党」の対立を皮肉で表現したもの。当時のイギリス人ならすぐに分かる描き方だったとのこと。

彼の描く批判内容はあまりにキツいこともあり、内容に激怒した政府が指名手配したことまであったとか。

他にもあるラピュタの元ネタの数々。

古代インドのヒンドゥー教の聖典「ラーマーヤナ」

さきほど宮崎氏の話に出てきた「ラーマーヤナ」は古代インドの物語で、ヒンドゥー教の聖典の一つ。「ラーマ王行状記」の意味。紀元前3世紀ころのものとされています。

※「行状記(ぎょうじょうき)」の意味・・・ある人物の日ごろのおこないなどを記したもの。

あらすじは、コーサラ国(古代インドの大国の1つ)のラーマ王子が、誘拐された妻シーターを、鬼神ラーヴァナから奪還するというもの。

物語では鬼神ラーヴァナが空飛ぶ宮殿にいて、そこには多くの財宝のあることが描かれています。しかもこの宮殿は「兵器」としての機能も持っています。

シーター、兵器としての機能を持つ空飛ぶ宮殿、たくさんの財宝・・・ラピュタに影響を与えていそうな雰囲気が十分にありますね。

ラピュタからエネルギー砲が放たれ大爆発が起こるシーンでも、ムスカがこう言っています。

天の火を放つscene
引用:スタジオジブリ|STUDIO GHIBLI

「旧約聖書にある、ソドムとゴモラを滅ぼした天の火だよ。ラーマヤーナではインドラの矢とも伝えているがね」

ここでラーマーヤナについて触れているわけです。

あと、この「インドラの矢」のことですが、おそらくこれは「インドラの雷(いかづち)」の誤り

インドラはヒンドゥー教における雷の神のこと。

「インドラの矢」はラーマ王子が持っていた強力な弓矢。巨大な敵を一撃で倒しますが、大量破壊兵器というわけではありません。

「インドラの雷」は雷の神インドラによる、敵を一瞬にして焼き払い全てを灰に変えるとされる攻撃のこと。

「太陽が一万個も集まった程の明るさがさく裂し、炎と煙が絡み合い光る柱が形成された…」など、その描写は核兵器を彷彿させます。

このラピュタのシーンにも影響を与えていそうです。

また、「ソドムとゴモラ」というのは旧約聖書に登場する都市の名前。道徳的退廃がはなはだしいため天からの硫黄と火によって滅ぼされたとされています。

飛行石のや他の宮崎作品に影響を与えた「砂漠の魔王」

下にあるのは無料Web漫画雑誌「電脳マヴォ」編集長で、京都精華大学マンガ学部教授・多摩美術大学非常勤講師でもある武熊健太郎氏のツイート。

1949年に始まり終戦直後の少年たちを夢中にさせた、福島哲次「砂漠の魔王」という作品。

「アラジンと魔法のランプ」から着想を得たもので、香木を焚くと香炉から巨大な魔王が出現し、飛行石の力を以って空を飛び、無敵の力を発揮するというもの。

小学生時代の宮崎氏もこの作品に夢中になったひとりで、作品に影響を与えたことを語っています。

ロボットや見たこともない乗り物、剣での戦闘など冒険要素がいっぱいで、「もののけ姫」のモデルのような、獣に育てられた王女も登場するのだとか。

ブンガラ国はとなりのアルバン国にせめられてやぶれ、そのうえ悪重臣のむほんがおこったので、女王プッセはポップ父子とともに、飛行石で空を飛んで城からにげた。

ポップは飛行石をもっていた。うたれるのをかくごで、にげようとおもえば、にげられないことはなかった。が、ブッセを敵の手にわたしておいて、そんなことができようか?決心しかねていると、隊長がいった。

「サア、その香炉をわたせ。それから飛行石もな。ハッハッハ。かくしたってだめさ。空を飛んできたおまえが、飛行石をもっていないはずはないからな。

宮崎氏と同世代で、少年時代にこの作品を読んだがラピュタを見た人なら「飛行石って砂漠の魔王のアレじゃない?」と分かるかもしれませんね。

「バルス」という言葉はマンガ「マッドメン」から

「バルス」はラピュタ語で「閉じよ」という意味。ピジン語で「ハト」。

こちらも熊健太郎氏のツイート。諸星大二郎氏の漫画「マッドメン」という作品から。

https://twitter.com/kentaro666/status/657503808554070017?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E657503808554070017%7Ctwgr%5Ec4eaf7303fa68487c5f6a5f2eb4cbe0d45a81f7f%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fnlab.itmedia.co.jp%2Fnl%2Farticles%2F1510%2F26%2Fnews124.html

1975年に始まった少年漫画で、パプア・ニューギニアを舞台に、近代化により失われ行く神話と伝統を、日本神話に絡めて描く物語。

宮崎氏は諸星作品の大ファンなのだとか。竹熊氏は過去に行なった宮崎駿さんにインタビューで、当時「マッドメン」について2時間ほど話を聞いたとのこと。

ちなみに「マッドメン(泥の男)」とはパプア・ニューギニアのアサロ族の祭礼で先祖の霊を表すとされる扮装(ふんそう)をした者たちのことを意味するそうです。

全身に泥を塗り、土製の仮面を被った姿になるのだとか。

これだけでも、ラピュタはいろんな作品からのヒントが詰め込まれているんだな…と思えます。

そういったアイデアを練りに練って作り上げられたのが「天空の城ラピュタ」だと思うと、ラピュタを2倍、3倍楽しめそうな気がしますね!

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まとめ

ラピュタにはガリバー旅行記や、宮崎監督の思い出の作品がいっぱい詰め込んであるんですね!

だからこんなにラピュタは面白く、何年たっても人々から愛されるのかもしれません。

ご覧いただき、ありがとうございました!

それでは素敵な1日を!ハトポッポでした!

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